生命の樹

賛否両論の映画「The Tree of Life」を観てきました。一神教を信じている人が、この境地に辿り着くのは、えらく大変なことなのだろうと思いました。私たち日本人には千年も前から染み付いている、諸行無常

沙羅双樹のかわりは紫木蓮の大樹のようでした。それが生命の樹(The Tree of Life)でもあったのかしら。まぁ、謎は沢山あるのですが、そんなことはあまり深く掘り下げなくていいのだと思います。とにかく美しい映像と音楽。ただただその時間に身を委ねればそれでいい映画だと思いました。劇場で観てよかったです。


星が生まれ、地球が生まれ、命が生まれ進化していく極大(無限)の世界と、ブラビ一家の、父と子の確執という極小の世界が、二重螺旋を描くように流れていきます。

一家のテーマ曲として、スメタナの「モルダウ」が使われています。小さな2つの水源が出会い、育ち、やがて大河になっていくこの名曲の構造がそのまま、この映画の流れでもありそうでした。


一家の紹介の後の、長い長い宇宙と生命の進化のシーンに使われているズビグニフ・プレイスネルのレクイエムからの「ラクリモーサ」が素晴らしいです。歌手のエルジビエタ・トワルニッカが喉から血を迸らせているのではないかという怪演に圧倒されます。


2001年宇宙の旅」の洗礼を受けた人なら、リゲッティのレクイエム「キリエ」を思い出すはずです。これへのオマージュなんでしょう。


嗚呼、でも、星新一がさらりと書いてしまったショートショートでいいような気もします。もっといえば、祇園精舎の鐘の声ひとつで。


とはいえ、迷っている人は人は観ておいたほうがいいです。できるだけ大きなスクリーンで。