目張り寿司

kyopin2006-04-18

目張り猫


昨日、高菜漬けを買ってきたら漬かりすぎて酸っぱかった。中国産では、遠いから古漬けになっちゃうのかしら。漬かりすぎの高菜は胡麻油で炒めてお総菜にしますね。今は全国の食べ物が流通してるので、高菜の炒め物も普通にお総菜屋さんに売ってあるし、高菜の炒飯なんかも何処でもいただけるようになりましたが、我が一家が名古屋に転居してきた60年代には、高菜のタの字も見かけませんでした。


たまに長崎に帰ると、祖母が「きょしゃーん、何が食べたかね?」って訊いてくれるのですが、わたしはいつも高菜と揚げ蒲鉾(薩摩揚げ)を注文して、「名古屋にはそげんもんも無かとねぇ」って、憐れまれたものでした。祖母は名古屋ってとても質素で不毛の土地だと思っていたようで、そんな安価な食材すらもないかと、可哀想な息子一家だと悲しんでいたようでした。


さてさて、すっぱい高菜漬けにもどりましょう。葉っぱの柔らかいところだけは目張り寿司にすることにします。あれは和歌山あたりの名物かしら、とにかく紀伊半島ですよね。長崎でもごく普通におむすびに巻いていただいてました。白いご飯が黄色く染まって、ちょっと酸っぱくてしょっぱくて発酵食品の旨味と相まって、白ご飯なのに、たしかにお寿司みたいです。目張り寿司という特別な名前では呼んでいませんでしたし、目を見開くほど大きくもむすんでいませんでしたけどね。


タネは明太が多かったかな。そうそう、メンタイという言葉も、60年代頃までは名古屋では通じなかったです。そのうち博多の辛子明太子がポピュラーになってきて、「明太子」は通じるようになりましたが、それはあくまでも辛子明太子の省略語としてで、普通の塩漬けのものはタラコ(鱈子)と呼ばねばなりませんでした。へんなのぉ。


「辛子」っていうのも九州弁ですねぇ。だって、共通語的には「辛子」というとマスタードのことでしょう?ツーンと効く黄色いあれ。辛子明太子は黄色くないですよね。辛子明太子の辛子は唐辛子のことです。九州では辛子っていうと唐辛子だったり胡椒だったりします。で、胡椒というと唐辛子だったりします。なんか、とってもややこしいのです。


山椒は小粒でピリリと辛い、と言いますが、「椒」というのが辛みの元で、外国という意味の「胡」や「唐」をくっつけて、唐辛子や胡椒という言葉ができたんでしょうね。漠然とスパイス全般を表していたのかも知れません。


さてさてみたび、高菜です。あの葉っぱも芥子菜ほどではないけど、僅かにピリっとしています。唐辛子(鷹の爪)も一緒に漬け込むからではなくて、葉っぱそのものに辛みがあるんです。その辛みは、もしかしたら防腐効果がありそう。真夏のお弁当によさそう。白ご飯よりも傷みにくいお寿司に似ているのかも。