春はひらひら、亀は海

kyopin2005-07-11

幸せのかたち


「夏は暑い、春は?」「ひらひら」
「兎は速い、亀は?」「海」
IQテストの問いに、こう答える女の子と、四時間ほど過ごしました。おとなしくて、明るくて、素直で、ひとなつっこい妖精みたいな子でした。わたしを見て、可愛い可愛いと言ってニコニコしている子です。(どうやら、顔ではなくて長い髪のことらしかったけど)


この子は、喜怒哀楽はあるんでしょうけど、ひがみ、ねたみ、そねみ、うらみ、などなど、そんな感情を持ち合わせていないようでした。一緒にいると、そのさらさらした心が伝わってきて、なんか幸せでほかほかしてきます。


やさしぃく、わたしの腕に腕を回してきて、時々、わたしの顔を見て、わたしがぐいーっと見返すと、にこっと笑って、恥じらうの。恥じらいが去った頃、またわたしの顔を見る。見られると、なぁんか幸せ。ほかほか。


「夏は暑い、春は?」って訊かれれば、「ひらひら」って答えたいけど、たぶん「暖かい」なんだろうな、「兎は速い、亀は?」って訊かれれば、「海」って言ってみたいけど、「遅い」と答えるべきなんだろうなと、わたしたちは自然に処世術のようなものを身につけて来たんだとおもいます。


あの子はどうなんだろう。この先、わたしたちみたいに、大人や世間の顔色を見ていくことを覚えてしまうのかしら。あの子はわたしの顔は見ていても、顔色は見ていないような感じでした。ただただ、微笑みかけたいだけのようでした。恥ずかしいくせにね。少女の胸は、少し膨らみはじめていました。