GGの耳

kyopin2007-03-14

なかよし


グリーグシベリウスというと、グレングールドの晩年の録音を思い出します。グールドのお母さんのお祖父さんがグリーグといとこ同士だそうですが(証拠はないらしい)、そのせいかしら、グールドは北国に憧れていたとか。


グリーグの音楽には必ずというくらい妖精さん妖魔さんが登場します。まぁ、こちらの思い込みで、そうでないところもそう聞こえるってのもありましょうけどね。で、その妖精さんをグールドは見えてないのか見ないふりしているのか、あまりファンタジックな演奏をしていないように思えます。


彼、独特の繊細な音は、ケルトのフェアリー系妖精ならともかく、北欧のでっかいムーミン系妖精世界に似合わないのかも知れないですが、そうではなくて、もっとシビアな世界観があるのだろうと思います。


その世界観ゆえか、シベリウスは凄い。よく日本でも寒冷地のひとは、「寒い」を越えた表現で、シミルとかシバレルって言いますが、駄洒落ではないですけど、シバレる音。シバレウス、シミリウス(やっぱ駄洒落か)


果てしなく透明で冷たい、つららの先ッぽのような音を連ねて、フィンランドの空気がこれでもかと皮膚に直接聞こえてきます。グールドの人間離れは妖精方面じゃなくて、大自然のオキテ、厳しさ、人間の体温の介在しない世界、なのかな。


ところで、グールドのお耳は、顔の大きさに比べてとても小さいです。すごく高い位置にあるし。


ね。後ろのおじさんのお耳と比べてみてください。わたしは昔からこのお耳がとても気になってます。グールドは、この小さなお耳で聞きたくない音を排除しているのではないかしらって。


初めて聴いたのは小学生の頃で、『インヴェンションとシンフォニア』でした。クラシック音楽にほとんど何も先入観のない頃でしたので、超個性な解釈であることも何も知らず、そのままスーっと素直にわたしの中に流れ込んできました。(先生の模範演奏とはダイブチガウゾ…とは思った)


それでもあのヘンなチックを起こすピアノの音色には驚いたものです。チッカリングというのがピアノのブランド名だったなんて知るのはずっとずっと後のことで、チックを起こすヘンなピアノのことをそう呼ぶのだと、チッカー少女は思い込んでいました。


故障したようなピアノで♪ふんふん♪鼻歌しながら弾く犬顔のハンサムに、淡い恋心を抱いたのは言うまでもありませんが、バッハに目覚めさせてもらった大恩人です。GGの小さな耳が選んだ音世界が好き。


Grieg・Bizet・Sibelius:Piano Works

Grieg・Bizet・Sibelius:Piano Works

バッハ:インヴェンションとシンフォニア(紙ジャケット仕様)

バッハ:インヴェンションとシンフォニア(紙ジャケット仕様)

グールドは今年、生誕75年、没後25年ということで紙ジャケが記念発売されてます。