5日夜に、死刑囚永田洋子さんが亡くなりました。。少女の頃からバセドー病に苦しみ、収監後には脳腫瘍が発覚。手術を受けるも、失禁や失神をするほどの激しい痛みに苛まれ続け、数年前には脳が萎縮していたといいます。逮捕時27歳。39年間の獄中生活でした。


あの事件の年、私は17歳でした。それほど興味は有りませんでしたが、やはりあれは大事件だったのでTVニュースではずいぶん見ました。あまりに残酷な事件でしたから半分は耳目を閉ざしていたようにも憶えます。


因果応報っていう人も有りますけど、誰だって鬼畜になってしまう種子を持っているのではないかと思います。運良く、発芽させる条件が揃わないだけで。一生、その芽を出させずに済めば幸せな人生でしょう。


万が一、発芽させてしまっても、強い意志や冷静な判断力を持って摘みとることも可能だとは思います。ただ、人はそんなに強く賢い人ばかりではありません。私も。


黒く大きな渦に巻き込まれるのは案外簡単だと思うんです。国が戦争を始めれば逃れられないですし、今この時代から観れば(あの当時であっても)馬鹿げたあんな革命ごっこでも、時代の風と共謀して、そこにいる人を軽く丸呑みしてしまったのだと思います。


渦の中にいる人はそこが渦の中だとは気がつかないものでしょう。被爆者である母に訊いたことがあります。キノコ雲は怖かった?って。そしたら母は、中に居たから観とらんとよって答えました。


幕末の志士のように、この国を良くするために革命を起こそうとし、そのために基地を作り、武器を買い集め、兵を訓練していた若者たち。純真無垢で大真面目だったのかしら。それとも、革命後の日本で特権階級の地位を得ようなどという欲もあったのかしら。


一緒に逮捕された森恒夫拘置所で自殺したことを聞かされた彼女は、「森さんは卑怯だ、一人だけ死んで」と言ったそうです。その後、自然死するまで、脳の中の残酷な鬼と向き合い続けることになる覚悟の言葉のようにも思えます。なんと大変な人生であったことでしょう。


ずっとずっと、人間は人間を殺してきましたから、きっとそんなふうに出来ているのでしょう。これから先も私たちは私たちを殺し続けるのでしょう。私たちの中には鬼も悪魔も棲んでいます。鬼でも悪魔でも、痛い痛いと苦しんでいるのは気の毒。こちらの気も毒されます。


連合赤軍の陰惨な事件など思い出したくないし、書きたくもないですけど、このところずっと閃輝暗点や視界が歪むほどの頭痛にまつわることを書いてきたのも何かの縁かと、少しだけ触れてみました。